個人再生の手続きの流れ|ポイントをわかりやすく解説!
1.個人再生とは 「個人再生」とは、自己破産や任意整理と同じ「債務整理」の一つの手法であり、裁判所を介して行う手続き…[続きを読む]
借金を解決する方法に「債務整理」があります。
債務整理は大きく2パターンに分類できます。
個人再生と任意整理は、借金の総額を減らして支払いスケジュールを再設定できる点が似通っています。
しかし相違点も多いため、状況に応じて適切にどちらかを選択しなければなりません。
この記事では、個人再生と任意整理の特徴や違いを説明していきます。
目次
まずは個人再生の特徴を解説します。
個人再生は裁判所に申立てをして行います。
裁判所を通すため、以下のメリットとデメリットがあります。
任意整理では、債権者と個別に交渉しなければならないため、場合によっては取り合ってもらえないことがあります。
交渉ができなければ、債務整理自体ができません。
これに対して、個人再生では裁判所を通して債権者全員に連絡がいくため、債権者が債務整理に対して取り合わないということはできません(必ず、賛成・黙認・反対の意思表示をしなければいけません)。
個人再生には2種類あって、「小規模個人再生」では、債権者の半数の反対がない且つ反対者の債権額が総額の2分の1に満たないこと、という利用条件があります。
裁判所から債権者に宛てて「個人再生に同意するかどうか」の書類が送付されます。債権者はそれを黙認(賛成)するか反対するかの権利が与えられます。
もう1つの「給与所得者等再生」では、債権者は反対意見を述べることはできるものの、個人再生に直接関与することはできません(その代わり、小規模個人再生より減額率が下がります)。
ほとんどの場合で小規模個人再生が利用されていますが、万が一大口債権者の反対にあったとしても、給与所得者等再生の利用で個人再生を行うことができます。
債権者の同意を得る、という観点では、個人再生は任意整理より容易であると言えるでしょう。
個人再生は裁判所のスケジュールに沿って進むので、債務者が早く借金を解決しようと急いでもどうしようもありません。
また、個人再生には必要書類や手続が多いため、手間と時間がかかります。
少しでも早く個人再生を進めるには、手続に慣れた弁護士の助力が不可欠です。
個人再生の減額率は債務総額が高くなるにつれて高くなり、最高で9割にも達します。
つまり、借金が10分の1になることもありえるのです。
大幅に減額してもらった後は、残った借金を原則3年程度かけて毎月少しずつ返済していくことになるので、生活がかなり楽になるはずです。
しかし、借金総額が100万円未満の場合は減額されないので、低額な借金の解決には向いていません。
また、借金額が5,000万円を超える人は個人再生を利用できないという決まりがあります。
個人再生の手続では、毎月いくらずつ返済していくのかなどを記した「再生計画」というものを作成する必要があります。
そして、その再生計画を実行するために「安定した収入が将来まで継続する見込みのある人」でなければ、裁判所がOKを出してくれません。
自己破産をすると財産の処分や没収が行われることがありますが、個人再生にはそういった心配が要りません。
例外的に、マイカーローン支払中の車などは、ローンの債権者が自己の所有権に基づいて回収してしまうことがありますが、ローン支払中のものでなければ基本的には手元に残せます。
ただし、個人再生には「清算価値保障原則」といって、「自分の財産を全てお金に換えたと仮定した金額と同じ金額分」は最低限弁済するルールがあります。
そのため、財産が多い場合は個人再生後の支払額が上がりやすくなります。
前述の通り、個人再生をするとローン支い払中の品物を債権者が回収してしまうことがあります。
しかし、住宅ローンについては「住宅ローン特則」という個人再生特有の制度を利用することで、マイホームを手元に残すことができます。
住宅ローン特則の利用条件は厳しく、条件を満たしている場合でも個人再生後は住宅ローンを従来通り支払わなければいけません。
しかし、他の借金を大きく減額した上で同じ家に住み続けられるのは大きなメリットです。
個人再生の場合、個人再生手続の開始決定と同時に差し押さえがストップします。
任意整理にはこういった効果がないので、既に差し押さえを受けている場合は個人再生を検討した方が良いかもしれません。
個人再生をすると「官報」という国の機関紙に氏名と住所が掲載されてしまいます。
官報は大きめの図書館で閲覧できるほか、発行から30日以内であればインターネットでも無料で閲覧可能です。
とは言え日常的に官報を読む人は少なく、仮に掲載されていたとしても知り合いには気づかれないと考えていいしょう。
個人再生を弁護士に依頼した際の費用の大体の相場は、以下の通りです。
着手金と報酬金を分けず、総額で記載または提示している法律事務所もあるので、よく比較・検討することが大切です。
個人再生をすると、弁護士費用とは別に裁判所に納める費用が発生します。
ここでは東京地裁のケースを紹介します(2020年3月現在)。
これらとは別に、「個人再生委員」という裁判所が選任する個人再生の監督役の人に支払う報酬が必要です。
裁判所によって、そして弁護士に依頼しているかどうかによって個人再生委員への報酬額は変動しますので、以下は一例です。
ここからは任意整理について述べていきます。
任意整理は裁判所を通さず、債務者が債権者と個別に交渉をして行う債務整理です。
以下のメリットとデメリットがあります。
裁判所を介さない分、債権者との交渉次第ではスムーズに話が進みます。
任意整理に慣れた弁護士に依頼すれば速度は一層上がるはずです。
また、個人再生では家計に関する資料を裁判所に提出しなければいけないため、例えば給与明細や保険証書、有価証券などを集めるときに家族に債務整理がバレる可能性があります。
任意整理ではそういった書類が必要ないため、家族にバレる可能性を低くできます。
自力で銀行や消費者金融、クレジットカード会社などと交渉しようとしても、門前払いを受ける可能性があります。
たとえ交渉に応じてくれたとしても、相手は金融・交渉のプロなので、うまく言いくるめられてしまい満足に減額できないかもしれません。
これを避けるため、任意整理は弁護士に依頼するのが一般的です。
弁護士に交渉を依頼すれば相手方は真面目に応じてくれますし、交渉で不利になるおそれも少なくなります。
任意整理を弁護士に依頼すると、まず「引き直し計算」をしてくれます。
これは、利息が利息制限法の上限を超えている場合に、法律に基づいた金利で計算し直して、払い過ぎていた差額の相殺や返還を求めるものです。
うまく行けばこの時点で借金が解決します。
もし引き直し計算後に借金が残っている場合は、将来発生する利息や遅延損害金などをカットして、元本部分のみを原則3年程度かけて毎月少しずつ返済する契約を債権者と結びます。
この結果支払総額を抑えることはできますが、個人再生ほど劇的な減額効果はありません。
借金の額が膨大な場合は焼け石に水ということもありえます。
個人再生では裁判所に申立てを行う際に、全ての債権者と債権額を明らかにしなければなりません。
しかし、任意整理は裁判所を通さないので、どの借金を整理してどの借金を整理しないかを個別に選択できます。
例えば「自動車ローンを整理するとマイカーを引き上げられてしまうから、自動車ローン以外の借金だけ整理しよう」ということが可能です。
ほかにも「今後の付き合いがある人の借金は任意整理から外そう」「保証人に迷惑がかかる借金はそのままにしておこう」などの選択ができます。
これは、裁判所が関与しない任意整理ならではのメリットでしょう。
任意整理では裁判所費用がかかりません。
弁護士に依頼した場合、債権者1社につき4~5万円程度の費用がかかります。
債務整理の中でも費用がかなり安く済むのが特徴です。
個人再生と任意整理に加えて、自己破産についての情報もまとめました。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|---|
借金の減額・免除 | 利息のカットが主 | 最大10分の1 | 全額免除 |
収入 | 必要 | 安定収入が必要 | 不要 |
住宅を残せるか | 残せる | 残せる(ローン完済済みだと難しい) | 残せない |
家族へのバレやすさ | バレにくい | バレやすい | バレやすい |
費用相場 | 債権者1社につき4~5万円 | 総額50万円~ | 総額20~40万円前後 |
債権者が任意整理に合意してくれない場合、または任意整理後に返済が困難になった場合は、任意整理から個人再生に切り替えることができます。
しかし、切り替えるには安定した収入があるなど、個人再生の条件をクリアしなければいけませんので、弁護士にご相談ください。
個人再生と任意整理には多くの相違点があり、借金の額や個人の希望によっても利用すべき場面が異なります。
どちらを選ぶべきか、弁護士に事情を話して判断してもらうのがいいでしょう。
そもそも個人再生は手続が複雑なので弁護士が必要不可欠ですし、任意整理は債権者と対等に交渉するために弁護士の力が要ります。
任意整理から個人再生への切り替えの判断にも、弁護士の知識があった方がいいでしょう。
どの方法を採るにしても弁護士が必要なので、借金問題でお悩みの方は、迷うことなくお早めに弁護士に相談してください。